現代社会の介護にまつわる問題点とは?原因や解決策を考える

公開日: 2022年03月18日

更新日: 2022年04月08日

  • 介護・高齢者施設

高齢化が進んだ日本では、介護を必要とする人が増えました。 介護のための保険やサービスも充実してきましたが、高齢者本人や介護する人を悩ませるトラブルは多様化しています。

ここでは、介護をめぐってどのようなトラブルがあるのか具体的に見ていきましょう。 また、それを解決する方法や相談ができる場所についても解説します。

要介護者の増加

近年、日本では介護の必要な人が増えています。
これは、平均寿命が延び、高齢者の数が増加したためです。 日本の人口は減少傾向にありますが、65歳以上の高齢者の人口は増えています。 2021年における総務省の統計によると、前年から22万人増えて3640万人となり、過去最多を記録しました。

また、人口に占める高齢者の割合は29.1%となり、この割合も過去最高とのことです。 少子高齢化が進み、3割近くの人が老人ということになりますね。 高齢者人口の増加とともに、介護保険制度における要介護または要支援の認定を受けた人(要介護者)も増えています。
厚生労働省の統計(2017年1月)によると、要介護者は全国で約629万2千人にのぼるとのことです。

介護における問題点

介護難民

介護をめぐる問題のひとつとしては、介護難民が挙げられます。
これは、介護が必要でも十分な介護を受けられない人のことです。 例えば、自宅での生活が難しくなったのに介護施設がいっぱいで入れないという例があります。

介護が必要な人が増えているのに、介護施設が思うように増加していないことが原因です。 都市部では、介護施設を建設する場所が足りないということもあるでしょう。 また、費用が安価な公的施設は人気があって入りにくいということもあります。

介護難民にならないようにするためには、行政や病院のケースワーカーなどに早めに相談をし、情報を得ておくことが必要です。 介護施設入所が難しければ、まずは在宅で介護サービスを受けることも検討しましょう。

老老介護・認認介護

老老介護

様々な事情で、高齢者が高齢者の介護をしている場合があります。
これが老老介護です。 例えば、夫婦のどちらかが介護を必要としており、その世話をもう一方が行っていることがあります。 あるいは、90代の親の面倒を70代の子どもが見ているというケースも。 介護を行う側も高齢者なので、自分自身も身体に不具合がある可能性があります。

そうなると、介護が辛いというだけでなく、要介護者も十分な世話を受けられずに困ることがあるのです。

認認介護

老老介護の中でも、特に介護を受ける側と介護をする側の両方が認知症という場合があります。 こういった介護は、認認介護と呼ばれています。

認知症によって判断力が衰え、適切な介護ができなくなります。 場合によっては、二人とも体調を崩してしまう危険がありますね。 老老介護・認認介護の危険を解消するためには、外部の介護サービスの手を借りることが必要です。
早めに地域の高齢者支援センター等で相談をして、家族だけで抱え込まないようにしましょう。

介護離職

高齢者の介護のために、家族が仕事を辞めてしまうことを介護離職といいます。 介護の忙しさや疲れから、仕事を辞めて介護に専念する人は少なくありません。 また、認知症の人の場合、身体は丈夫な一方で、徘徊が心配ということもあります。 それを防ぐために「常に一緒にいないといけない」と考え、仕事を辞めてしまうのです。 中には、頻繁に仕事を休むことが必要になり、会社に迷惑をかけるのが嫌で辞めてしまうという人もいるでしょう。

しかし、仕事を一旦やめてしまうと、収入が断たれてしまい経済的に困窮するおそれがあります。 安易に仕事を辞めてしまう前に、高齢者支援センターなどで相談をし、介護を一人で抱え込まないようにしましょう。
施設入所や介護サービスの利用で、安心して仕事を続けられる可能性も十分あります。

高齢者の一人暮らし

最近では、高齢で一人暮らしをする人も増えています。 このような人が介護を必要とする状態になった場合、家族がいる人とはまた別の問題が生ずるかもしれません。 例えば、急に身体の具合が悪くなった時、病院に連れて行ってくれる人がいないかもしれません。

受診のタイミングが遅れ、場合によっては孤独死や重い障害につながる危険性があります。 買い物や食事の支度が思うようにできないと、適切な栄養がとれず、さらに身体を壊す結果になりかねません。 自宅の中で転んでケガをしたり、風呂場で気を失って亡くなったりするという事故も見られます。 一人暮らしの人は、突然体調が悪くなった時に通報できる装置を利用するとよいでしょう。

また、配食サービスや介護サービスの人に定期的に来てもらえば見守りのためにも有効です。

虐待行為

介護職員による虐待

多くの介護職員は心を込めて高齢者の介護に当たっていますが、中には虐待行為を行ってしまう人もいないわけではありません。 高齢者に対して、殴る・つねるなどの暴力をふるってしまい、その結果命が失われるケースも。

高齢者が動かないようベッドや車いすに縛り付ける行為も、ニュースなどで取り上げられています。 緊急時には必要なこともあるかもしれませんが、むやみに拘束するのは虐待とされることがあるのです。 その他、高齢者に対して暴言を吐く、無視をするなどの虐待もあります。

介護の仕事はストレスが大きく、それを利用者にぶつけてしまうのかもしれません。 虐待と思われる行動や兆候を見つけたら、迷わずに施設長に相談をしましょう。 自治体の窓口でも相談を受け付けています。

家族による虐待

家族が介護している場合も、高齢者への虐待は起こり得ます。 毎日の生活の中で、ストレスをぶつけ身体的・精神的な虐待をしてしまうことがあるのです。 寝たきりの高齢者の世話は身体的な負担が大きく、疲れがたまります。 夜間のトイレ介助などが繰り返されると、介護者が睡眠不足になって辛いことも多いでしょう。

また、認知症の高齢者は家族に暴言を吐いたり、「物を盗まれた」といわれのない疑いを言い募ったりすることも。 徘徊をする人や、家族の名前を忘れてしまう人もいます。 このようなことが繰り返されると、家族は追い詰められてしまいます。 それが、暴力や暴言、ネグレクト(世話をしないで放棄してしまうこと)につながってしまうのです。

辛いと思った時は一人だけで抱え込まず、自治体等の相談窓口・認知症家族の会などで相談をしましょう。 また、デイケアやショートステイの利用で休息を取ることもできます。

成年後見人トラブル

成年後見人というのは、認知症の高齢者のために財産の管理や介護サービス等の契約を代行する人のこと。 本人の親族や弁護士・司法書士などが、家庭裁判所からの選任を受けて就任します。 認知症の高齢者を支える制度ですが、この成年後見人が本人の財産を不当に使ってしまうというトラブルが起こっています。

このような不正が発覚すれば、後見人は解任され、場合によっては横領などの罪に問われることになります。 ただし、親族が後見人になった場合、職務の範囲を理解しておらずうっかりお金を使ってしまうというケースも。 成年後見人となった人は、その職務について十分に学び、本人の利益を損なわないように注意することが大切といえます。

また、認知症にならないうちに任意後見制度を利用して、あらかじめ自分で後見人や契約内容を決めておけば、不正が起こりにくく比較的安心といえるでしょう。

介護における問題への解決策

介護サービスを利用する

介護保険を使い、少ない金銭負担で受けられるサービスがあります。 少子高齢化によって、介護サービスに対するニーズはいっそう高まっています。 現在では多様な介護サービスが提供されており、老人ホームなどの施設への入所だけでなく、自宅で生活しつつ受けられるサービスも増えてきました。

例えば、自宅に介護従事者が訪問して介護をしてくれるサービスや、ホームヘルパーの派遣もあります。 自宅で生活しやすいように環境を整えるリフォームにも、介護保険を使うことが可能です。

身体能力の維持や向上を目的としたデイケア、一時的に宿泊できるショートステイなども。 自分のニーズに合った適切なサービスを探して利用すれば、介護に伴う様々なトラブルを解消できるでしょう。

地域包括支援センターに相談する

少子高齢化対策として、地域内で高齢者を支える施設です。 介護をめぐって心配なこと、困ったことがあれば、最寄りのセンターに相談してみましょう。

高齢者が要介護になると、老人ホームへの入所を検討するかもしれません。 しかし地域包括支援センターでは、まずは高齢者が住み慣れた地域で過ごせることを目指しています。
そのために、「介護」「予防」「医療」「住まい」「生活支援」といった必要なサービスを地域内で提供する体制を整えているのです。

居宅介護支援事業所に相談する

居宅介護支援事業所とは、ケアマネージャーのいる事業所のこと。 ケアマネージャーとは、介護保険のサービスをどう使うか計画を立て、実際にサービスを提供する事業者とつないでくれる人です。

ここと契約すれば、事業者との連絡調整の他、介護保険の申請まで行ってくれます。 利用料は全額介護保険でまかなわれるので、何度相談をしても無料です。 様々な介護サービスや事業所を知っているのが、ケアマネージャーという職業。 今困っている状況を解決するためにどのようなサービスを受ければよいか、相談に乗ってくれるでしょう。

ただし、ケアマネージャーに計画(ケアプラン)を作ってもらうためには、まずは介護認定を受ける必要があります。 自治体に申請をし、介護認定を受けた後、居宅介護支援事務所と契約するという流れになっています。

介護をめぐる問題は一人で抱え込まないことが大切

高齢化に伴い、介護が必要な人はますます増加し、その分様々なトラブルも生じています。 介護のトラブルは、高齢者の生活の質を大きく損ねることがあり、人としての尊厳を失わせることにもなりかねません。

また、高齢者介護は、介護者にとって身体的・精神的な負担が大きく、それが深刻な問題につながっています。 介護をめぐってトラブルに直面した時は、積極的に自治体等の窓口で相談をしましょう

介護サービスの利用などによって、高齢者本人も介護者も楽になる可能性があります。 一人で抱え込まず、誰かの手を借りることが大切です。

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