湯灌って何?湯灌を行う意味・方法・流れ・費用・マナーについて

公開日: 2022年05月16日

更新日: 2022年05月20日

  • 葬儀・供養

葬儀の前に、湯灌という儀式を行うことがあります。 湯灌とは、どのようなものなのでしょうか。 ここでは、湯灌というものの持つ意味について解説します。
また、その方法・流れについても確認していきましょう。 湯灌を行うなら、どのくらい費用がかかるのかという点や、湯灌の儀式に立ち会う際のマナーについても解説します。

湯灌とは?

湯灌の意味合い

湯灌とは亡くなった方の身体をお湯で洗い、清める儀式をいいます。 湯船につからせて、全身を洗ったのちに髭剃りや化粧をして、身なりを整えてあげるのです。
もともとは、ご遺体の汚れや体液の漏れなどへの対処として必要なものでした。 それと同時に、あの世に旅立つ前に故人をねぎらい、身づくろいをしてあげるという儀式的な側面もあります。
現世での汚れを洗い流して、清浄な状態であの世へ向かわせるという意味合いがあるのです。

近年の湯灌について

ただし、今は病院で亡くなると、エンゼルケアといって看護師が清拭を行い、必要な処置はきちんとしてくれます。 そのため最近では、湯灌をしないで清拭だけで済ませる人も出てきました。
しかし、それだけでは物足りないという人もいるため、葬儀社から「湯灌もしませんか」と提案されることがあるのです。
湯灌は従来、亡くなった方の親族が行うものでしたが、最近では葬儀社や湯灌専門の業者が中心となって行うことがほとんどといえるでしょう。 なお、神道では湯灌とはいわず、沐浴と呼ばれています。

湯灌と死化粧やエンバーミングとの違い

死化粧

死化粧とは、亡くなった人の身体を清め、化粧を施すもの。 亡くなる際に、やつれたり苦しい表情になってしまったお顔を安らかな印象にする作業です。
死化粧では、身体を拭いて着替えさせたうえで、髭剃りや化粧品を使ったメイクをし、顔色を整えます。
ただし、湯船に入れて身体を洗うことはしないのが、湯灌との大きな違いです。 髪を整える際も、死化粧ではドライシャンプーを使います。
湯灌の場合は、普通のシャンプーを使って髪を洗い流してくれるのです。 また湯灌では身体を洗った後で、きちんと髭剃りや化粧もしてくれます。

エンバーミング

エンバーミングは、遺体に防腐処理を施し、顔色や傷跡などを整える技術です。 血液を抜いて、代わりに防腐剤を入れる形になります。
湯灌とは異なり、儀式というよりも遺体を長い時間持たせること、美しい状態にすることが目的の技術です。
特に、葬儀までの日数が長くかかる場合や、事故などで遺体の損傷が激しい場合には、エンバーミングを検討することになります。
エンバーミングができるのは、特殊な技術を持った専門家だけです。 葬儀社以外の専門家に来てもらって、対応してもらうことになります。

湯灌の方法

湯灌を行う場所

湯灌を行う場所は、葬祭会館か、ご自宅のどちらかになります。 納棺までの間に、ご遺体が安置されている場所で行うものです。
昔は寺院に湯灌場という専用の小屋があって、そこで湯灌を行っていました。 今は葬祭会館に専用の設備があり、そこで湯灌をしてもらえます。
また、自宅にご遺体を安置しているなら、専用の浴槽などを持ちこんで湯灌をしてもらうこともできるのです。
湯灌専用の車で来てもらい、お湯の給水、排水もしてもらえます。 自宅で湯灌を行った場合、使ったお湯は床下に流すというしきたりもありましたが、今は業者が持ち帰って処理してくれるのです。

湯灌のタイミング

一般的に、湯灌を行うのは、納棺の前になります。 どのタイミングで行うのかは、はっきり決まっているわけではありませんが、納棺をした後では、湯灌はできません。
身体を清めて着替えをさせ、その後、家族で棺に納めるという流れになります。 湯灌に立ち会いたい親族がいる場合は、その人が来るのを待つことが必要なので、あらかじめ段取りを葬儀社と話し合っておきましょう。

湯灌を行う人

湯灌を行うのは、葬儀社のスタッフや湯灌師と呼ばれる専門家です。 ただし、家族などの立ち合いは可能ですし、その場合は、儀式の一部を家族が行うこともあります。
もちろん、場合によっては専門家にすべてをお任せすることも可能です。

湯灌にかかる時間

湯灌の儀式そのものにかかる時間は、60分から90分程度です。 ただし、浴槽やお湯のセッティング、儀式を始める前のご遺体のマッサージなどに時間がかかる場合があります。
また、その後、納棺まで続けて行う場合は、更に時間がかかることもあるので、ゆとりをもったスケジュールにすることが必要です。

湯灌の流れ

浴槽の準備

自宅で行う場合は、十分な広さのある部屋にシートを広げ、浴槽を運び入れるなどの準備が必要です。 葬祭会館で行うなら、湯灌を行う専用の部屋に案内されます。

マッサージ

ご遺体の衣服を脱がせて、湯灌の準備をします。 全身をマッサージして、死後、硬直してしまった身体をほぐしてくれるものです。

ご遺体の移動

湯灌を行う場所に、ご遺体を運びます。 身体が直接見えないように、バスタオルなどで覆った状態です。

口上

葬儀社のスタッフや湯灌師が、口上を述べると儀式の開始です。 湯灌の儀式の意味合いについて、立ち会った人に説明してくれます。

お清め

ひしゃくのお湯を使って、ご遺体を清めます。 ご遺族が一人ずつ、足元から胸元にかけてお湯をかけてあげるものです。

顔・頭髪のお手入れ

スタッフがご遺体の顔を洗い、男性の場合は髭剃りもします。 ここで髪も洗うので、故人の好みのシャンプーを使ってもらうことも可能です。

お清め(全身)

全身を石鹸で洗い、流してくれます。 この作業も、スタッフが手際よく行ってくれるでしょう。

アロマ

業者によっては、ここでアロマを使って身体によい香りを付けてくれることもあります。 できれば、故人の好みや雰囲気に合わせた香りを希望するとよいでしょう。

化粧・着付け

身体を拭いて、着付けをします。 白い着物の場合が多いのですが、故人の愛用していた服を着せることも可能です。 ここで髪のセットも行い、化粧を施します。

湯灌後

ご遺体の身なりが整ったら、湯灌は終了です。 この後は、納棺の儀式にうつることになります。

湯灌の逆さ水とは?

湯灌の時は、ぬるま湯を使いますが、このお湯を用意する際、まず水を入れた後お湯を足してちょうどよい温度にします。 この手順を「逆さ水」というのです。
通常、お風呂でお湯の温度を調節する時は、まずお湯を沸かして、熱ければ水を足しますね。
しかし、湯灌ではその逆を行うのです。 葬儀にまつわる様々な儀式の手順は、あえて通常とは逆にすることがあります。
例えば、死装束の着物は、通常とは違って左前にしますね。 逆さ水も、このあり方にのっとった作法といえるでしょう。

湯灌にかかる費用

湯灌の費用は、通常の葬儀の料金には含まれていないことがほとんどです。 湯灌を希望する場合は、多くの場合、別料金となります。 湯灌の費用は、葬祭場で行うなら5万円が相場です。
ご自宅に湯灌専用の車で来てもらうのであれば、10万円程度かかるでしょう。 葬儀社によっては、一般的な葬儀の費用に湯灌の分も含まれているところがあるかもしれません。
このような点については、葬儀社に確認を取ることが必要です。 また、事前にいくつかの葬儀社を比較しておくことも大切ですね。

湯灌のマナー

服装

湯灌に立ち会う際、服装に関しては、特に決まりはありません。 通夜や告別式のように、喪服でなくてはならないという決まりはないのです。
平服でも喪服でも構いませんが、喪の儀式ということを考えると、派手な色・柄物、露出が多い服などは避けるべきでしょう。

立ち会える人

立ち会えるのは、基本的に故人の家族・親族のみです。 身体を洗うということが中心となる儀式なので、ごく身近な家族のみに限ります。
また、小さいお子さんの場合などは、落ち着いて見ていられないことがあるかもしれません。 親しい人のご遺体を見て、ショックを受ける場合もあるので、注意が必要です。

湯灌について十分に理解した上で検討しよう

湯灌とは、故人を送り出すための一つの儀式です。 専門のスタッフの手で、ご遺体を清めて、遺族もそれに参加することができます。
湯灌を行うにはそれなりの費用が必要であり、必ずしなくてはならないというものではありません。
しかし、単に、身体を綺麗にするというだけでなく、手を尽くして送り出したと感じられるメリットがあります。 湯灌で行う内容や費用を確認し、十分納得した上で行いたいものですね。

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