デジタル遺品のトラブルを防ぐ!正しい生前整理でデータを守ろう

公開日: 2021年11月22日

更新日: 2022年05月20日

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故人が遺したスマホやパソコン、あるいは、その中のデータをデジタル遺品と呼びます。 このようなデジタル遺品はどうしたらいいのでしょうか。
ここでは、デジタル遺品によってどのようなトラブルが起こるのか、くわしく見ていきます。
遺族が扱いに困るだけでなく、自分自身のプライバシーにかかわる問題が起こることもあるのです。 デジタル遺品を扱う遺族の心得と共に、いざというときに備える生前整理についても解説します。

デジタル遺品とは

最近では、デジタル機器が多く使われるようになり、それが遺品となることも増えてきました。
このようなデジタル機器の遺品、または、そこに残されているデジタルデータのことを「デジタル遺品」と呼びます。
例えば、パソコンやスマホに加えて、そこに残された写真や個人情報など。 その他、ネットバンクで管理している金融財産も含まれます。
ネット社会ではあらゆるものがデジタルで管理されるようになり、それに伴ってデジタル遺品の問題がクローズアップされてきました。
例えば、残された家族が、デジタル機器のパスワードを解除できず、ネットバンクに残された財産に気付かないまま、ということもありえます。
また、自分のパソコンやスマホの中に入っているものを、死後、家族や他人に見られたくないということもあるでしょう。

デジタル遺品のトラブル

端末のパスワードがわからない

よくあるのが、スマホやパソコンなどのIT端末の問題。 持ち主が亡くなった後、パスワードが分からず、端末を開けないということがあるのです。
例えば、思い出の写真が残っていたとしても、端末を開けないとどうしようもありません。 二度と写真を見ることができなくなってしまいます。
もっと困るのは、友人や親戚の連絡先をスマホやパソコンにしか保存していないという場合。 訃報を伝えたり、葬儀に来てもらいたいと思ったりしても、パスワードがわからなければ連絡のしようがなくなってしまうのです。

相続財産の存在に気づかない

最近では、ネット上だけで銀行口座を持てるようになっています。 店舗を持たないネット上の銀行に加えて、従来の銀行でも通帳なしで取引を行う場合が増えてきました。
ネット上の口座があることを知らないでいると、そのまま財産が宙に浮いてしまうことになります。

また、後になって財産の存在が判明し、相続トラブルになる恐れもあるのです。 その上、相続財産がプラスのものとは限りません。
場合によっては、借金が残っていることもあります。 気付かずに放置した負債がいつのまにか膨らんで、相続人に多額の請求が来る可能性も考えられます。

契約を解除できない

デジタル機器を使い、ネット上で様々なサービスの契約をしていることがあります。 しかし、そのことに遺族が気付かないと契約がそのままになってしまい、利用料金を払い続けることになります。
例えば、有料のアプリなどは、デジタル機器そのものを処分しても契約はそのままということになります。
動画のサブスクリプションなども、自動更新に設定されていると、ずっと更新され続けてしまう可能性がありますね。
どのようなサービスと契約しているのかは、本人以外には分かりにくいため、後になって支払いが続いていることに気が付くこともあるというわけです。

不正アクセスの被害に遭う

デジタル遺品の扱いを間違えると、不正アクセスの被害に遭い、他人にも迷惑をかけるかもしれません。
例えば、ツイッターやフェイスブックなどのSNSを放置しておくと、アカウントが乗っ取られてしまう恐れがあります。

また、パスワードが分からないからと、データを消去しないまま機器を処分するのも危険な行為。
信頼できない業者の手で解析され、中に入っている個人情報を抜き取られてしまう可能性もあります。
場合によっては、乗っ取られたアカウントやメールアドレスが、犯罪の踏み台にされてしまうこともあるのです。

デジタル遺品を扱う際の注意点

むやみにパスワードを試さない

パスワードが分からない時、焦って適当に入力しまくるのは禁物です。 適当に入力してもロック解除ができないばかりか、かえって面倒なことにもなりかねません。
デジタル機器は、多くの場合、他人に何回も違うパスワードを入力されてロックを突破されるのを警戒する機能が付いています。
一定の回数、間違ったパスワードが入力されると、しばらくの間ロック解除ができなくなる設定になっていることがあります。
端末によっては、何度も間違えると異常なアクセスと認識して、データを全消去する設定になっているものも。 確信の持てるパスワードなら試すのも一つの方法ですが、慎重に行いましょう。

他の相続人の許可なく触らない

デジタル遺品を触るのは、他の相続人に許可を得てからにしましょう。
一人で勝手にロック解除をしたり、データをいじったりすると、トラブルにつながります。 デジタル機器本体だけでなく、そこからアクセスできるデータや金融口座なども相続財産となる可能性があるのです。
遺産分割協議が終わるまでは、相続財産は相続人全員の共有物なので、勝手にいじることは許されません。 場合によっては、訴訟に発展することもあるので、相続人全員の許可を取ってからにしましょう。

そのまま売却しない

リサイクルショップなどでは、中古の端末を買い取ってくれることがあります。 しかし、データを消さないまま売却するのは非常に危険な行為です。スマホやパソコンは、個人情報の塊といっても過言ではありません。 住所録やメール、LINEの内容が見られてしまうだけでなく、銀行口座やQRコードによる決済で金銭的被害に遭う可能性も。
パスワードが分からず、端末を開けないから大丈夫とは限りません。 プロならロック解除やデータの抜き取りも可能な場合があります。 売却するなら、必ず初期化をしてからにしましょう。

専門業者に依頼する

パスワードが分からないという場合は、専門業者に頼んでデータを取り出してもらうことも可能です。 信頼できる専門業者に依頼すれば、大切なデータの消失や流出の可能性を減らせます。
思い出の写真や住所録を取り出すために、端末のロックを外したいと思ったとき。 また、データを消してから処分をしたいけれど、自分では初期化の仕方が分からないという場合もあるでしょう。
そんなときには、パソコンの修理業者などにお願いをして、処理をしてもらった方が安全です。

デジタル遺品の生前整理

データを普段から整理しておく

スマホやパソコンのデータは、生きているうちに自分自身で整理しておきたいものです。 不要なデータは、こまめに消しておくようにしましょう。
また、死後、遺族に見られたくないデータがあるなら、大丈夫なものと見られたくないものとに分けておくことが大切です。 見られたくないものは、ファイルにまとめてロックをかけることができます。
例えば、WordやExcelなどのファイルだけでなく、Outlook Expressのようなメールソフトにもロックをかけることは可能です。

パスワード等を一覧表にまとめる

いざというときに遺族が困らないようにするためには、デジタル遺品に関する必要な情報をまとめておくとよいでしょう。
スマホやパソコンのパスワードや口座情報、契約しているサービスなどを紙に書き出しておくと、スムーズに対処ができます。
さらに、そうした情報がきちんと遺族に見てもらえないと困りますよね。 例えば、エンディングノートに記載して、遺族の目に付きやすい場所で保管するなど工夫をしましょう。

自動削除ソフトを利用する

流出しては困るデータ、家族に見られたくないデータについては、自動削除ソフトを使う方法もあります。 一定の期間、パソコンを起動しないでおくと、指定のデータを自動的に削除してくれるものです。
また、削除する日付を事前に設定できるものもあり、その場合は、データを保管するために自分で日付を延長し続ける形になります。
その他、決められた期間が過ぎたあとでパソコンを起動すると、指定のデータを削除するだけでなく、遺族へのメッセージを表示してくれるものもありますよ。

デジタル遺品のトラブルを避けるには生前の準備が大切

デジタル遺品のトラブルは、想像以上に深刻です。 自分の死後、データの流出やアカウントの乗っ取りで他人に迷惑をかけることがあるかもしれません。
また、遺族に大変な思いをさせたり、金銭的に損害を与えたりする可能性もあります。 このようなことを避けるには、生前にしっかりと準備をしておくことが必要です。
まずは、日ごろからデータを整理し、パスワードのメモをしておくところから始めましょう。

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老後・死後についてのトラブルを回避するためには、生前のうちに起こりうるトラブルを想定して対策を取っていく必要があります。
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相談は無料ですので、老後・死後に不安を抱えている方はぜひ一度利用してみるのがおすすめですよ。

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