身元保証人と責任の範囲

【相談事例】

Aさんは有料老人ホームに入所しています。Aさんは、先日、居室のキッチンで調理をしていたところ、誤って火の不始末をおこしてしまい、キッチンの設備や居室の壁面を一部焼失してしまいました。Aさんは責任を感じて、全額損害賠償をしたいと申し出ていますが、賠償額が多額であることから、有料老人ホームは、Aさんの身元保証人であるBさんに対しても賠償額の負担をしてもらいたいと思っています。
身元保証人Bさんはどこまで責任を負わなければならないのでしょうか。

【回答】

有料老人ホームはBさんに対しても、発生した損害について賠償を請求することができますが、一部減額されることがあります。2020年4月以降の身元保証では、極度額の範囲内で責任を負う必要があります。

【身元保証人の責任】

身元保証人は、「本人の素性や人柄といった、本人の人物保証をする人」といったイメージがありますが、実際には、

  1. 滞納家賃や未払いの入院費などの返済、および故意・過失を問わず雇用主に与えた損あります害被害の賠償(債務保証)
  2. 手術への立ち会いや輸血・延命処置などの同意(医療同意)
  3. 退院時の身柄の引き取りや認知症等で自立して生活ができない場合の生活支援(扶養)
  4. 本人が亡くなった場合の遺体・遺品の引き取り、埋葬、相続手続きなど一連の対応(死後対応)

と、身元保証人が担うべき役割は多岐にわたります。このように、身元保証人の負うべき責任の範囲は極めて広く、責任が重くなりすぎる可能性があるため、次のような制限が加えられています。

【身元保証に関する法律による責任の制限】

まず、期間は定めがあれば5年までとされ、なければ3年とされ(身元保証に関する法律2条)、いわゆる自動更新の規定は無効とされます。このため期間満了後も身元保証人を必要とする場合、期間満了の都度、身元保証契約を締結しなければなりません(東京地判昭和45・2・3判タ247-280)。

最も大事な規定が、保証責任の裁判所による制限に関する規定です(身元保証に関する法律5条)。裁判で争われるのもほとんどこの規定による責任範囲です。条文では、裁判所が身元保証人の責任範囲を制限する際に考慮する事情として、【1】会社側の過失、【2】保証するに至った経緯、【3】その他一切の事情が掲げられています。

【2020年施行の改正民法による極度額の定め】

(1) 極度額の設定の必要
身元保証は、責任の範囲が無限に拡大する危険がある包括根保証の一種として、改正民法465条の2の個人根保証契約の責任等による極度額の設定等の規制を受けると解されています。つまり、2020年4月1日以降に締結する身元保証には、この責任の範囲を限定する極度額の定めがない場合には身元保証契約が無効となります。そこで、極度額の定めが必要です。なお、改正民法施行前から既に締結済の身元保証契約の効力が継続する期間中は上記制限が適用されません。
しかし、最大5年の定めの期間が満了し(身元保証に関する法律2条)、身元保証を更新した場合には、改正民法による極度額設定の規制が適用されます。
(2)極度額の定め方
極度額の定め方は実に悩ましい問題です。例えば、雇用契約における採用時の年収総額相当額などの定めでは、身元保証人の知らない間に極度額が変化する可能性があり無効とされる危険が高いでしょう。他方、具体的に極度額1000万円と決めた場合には、身元保証人が躊躇することが予想されます。今後、保証会社の利用も含めて、身元保証制度の利用を見直す必要があるようです。

【身元契約締結の際に検討すること】

高齢者施設の入居や病院の入院時などにおいては、身元保証人を立てることが一般的であり、身元保証人を立てないことで施設の入所や入院を拒まれることも少なくありません。社会状況の変化による家族関係の希薄化により、親族に身元保証人を依頼する高齢者は減少している一方で、超高齢社会の加速化により、身元保証人を必要とする高齢者は増加しています。確保することが難しくなりつつある身元保証人を確実に確保するためには、身元保証人が負うべき責任の範囲を明確にし、過大な責任を負わなくても済むように配慮する必要があります。
身元保証契約締結の際には、以下のことを検討しましょう。

  1. 各種の損害保険に加入し、身元保証人に頼らなくても損害の回復がはかれるシステムを作ること
  2. 身元保証に関する法律上の身元保証契約であることを明記した契約書を用いること
  3. 確実に身元保証契約を5年毎に切り替え、この切り替えに協力しないことを、身元保証契約上の契約解除事由としないこと
  4. 身元保証人の資力・支払能力・資産の所在などを確認しておくこと
  5. 身元保証契約書は必ず保証人本人の自筆で書いて貰い実印による押印と印鑑証明書を添付しておくこと
  6. 極度額の定めを置くこと

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