4月19日に内閣府発表の高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)を徹底解説!

公開日: 2024年06月11日

更新日: 2024年06月12日

  • 身元保証

高齢者等終身サポート事業の健全運営化

4月19 日、内閣府の孤独・孤立対策推進本部が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」を発表しました。身寄りのない高齢者を支援する民間事業者が増加し、それに伴いトラブルが多発していることを受けて示された指針となっています。

実は、このガイドライン案作成にあたり、私たち身元保証相談士協会は総務省の行政評価局から数回にわたりヒアリングを受け様々な資料提供をしており、我々がお伝えした内容がガイドライン案全体に反映されています。中でも特に重要な項目について、ここに徹底解説いたします。

身寄りのない高齢者に関するトラブル防止へ

高齢者人口が増え続ける現代において、家族がいても疎遠だったり、身寄りがなく身近に頼れる人がいない高齢者が様々な問題に直面しています。高齢者施設への入居や病院への入院、亡くなった後の手続きをお願いできる人がいないなどの問題が起きている中で、民間の事業者が、身寄りのない高齢者を支援するサービスを提供しているのが現状です。

そこで問題となっているのが、後期高齢者など特に判断能力が衰えている可能性がある方に対して、財産や老後の生活に影響するような非常に重要な取り決めを、曖昧な条件で進めている事業者が多いという問題です。そうした背景から、今回初めて「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」として、政府が明確な方針を示しました。特筆すべき内容について、ひとつひとつ見ていきましょう。

業務区分が明確となり介護事業者の負担軽減へ

今回のガイドライン(案)には、高齢者等終身サポート事業において提供されるサービス例の一覧が明記されています。

ここで着目すべきは、このサービスの中に、現状やむを得ず介護者やケアマネージャーが担っている業務が記載されている点です。

たとえば、緊急時の通院の付き添いなど、本来であれば家族がサポートするような場面において、おひとり身であったり親族が遠方に居てすぐに対応できないことから、身近な介護者がやむなく無償対応しているケースが少なくありません。今回、高齢者等終身サポート事業が定義されたことで、介護事業との業務区分が明確に分けられたことになります。

これにより、介護事業者の負担が軽減され、本来の業務に集中できる環境整備に一歩近づいたといえるのではないでしょうか。

公正な契約締結のために留意すべきこと

公正な契約書を交わすことは、健全な身元保証サービスを提供するうえで不可欠です。しかしながら、比較的規模の大きな事業者でも、いい加減な契約で身元保証を請け負っている実態があります。

今回発表されたガイドライン案には「契約締結に当たって留意すべき事項」として、下記の項目について契約内容を説明すべきとの見解が示されています。

ポイントは以下の2 点です。

  1. 契約締結にあたって、事業者は民法や消費者契約法に定められた民事ルールに従いつつ、契約内容の適正な説明(契約書・重要事項説明書を交付した説明)を行うことが重要。また、医療・介護関係者等との連携や、推定相続人への説明など、きめ細かい対応を行うことが望ましい。
  2. 寄付・遺贈については、契約条件にすることは避けることが重要であり、遺贈を受ける場合も公正証書遺言によることが望ましい。

現在、これらの要素を満たさない契約を締結している事業者が散見されます。各事業者が指針を遵守し、健全な運営を行うことができれば、身寄りのない高齢者の方々はより安心してサービスを利用できるようになるでしょう。寄付、遺贈については次の項目で解説いたします。

死因贈与契約および事業者へ寄付・遺贈は不適切

これまで寄付や遺贈に関するトラブルが絶えず、問題視されてきましたが、今回、事業者との死因贈与契約や事業者への遺贈・寄付は避けるべきとの明確な指針が出されました。

仮に事業者が死因贈与契約や遺贈によって利用者の死後に財産を受け取る場合、事業者にとっては、サービス提供にかかる費用を抑えれば、その分だけ受けとれる財産の額が増大するという利益相反的な関係性となります。これにより、利用者に対する生前のサービスの質が低下し、死後に相続人との間でトラブルにもなりかねません。利用者や介護事業者からみれば、寄付金を受け付けない事業者の適正なサービス料金が高いと思われ敬遠されることがありましたが、今回の指針によって、寄付金目当てで安価なサービスを提供する事業者は推奨されないことが明確になりました。

預託金は運営資金と明確に区分して管理を

身元保証事業を行ううえで、たとえば死後に発生する葬儀の費用など、サービス提供のための前払金(預託金)を受ける場面があります。

こうした利用者からの預託金と、事業者自身の運営資金等との混在を防止し、事業者が万が一の経営破綻等に陥った場合でも利用者の被害を極小化するため、預託金は運営資金とは分けて信託口座で管理されるべきとの指針が示されました。

また、「高齢者等終身サポート事業者が任意後見人になる場合の留意事項」として、下記の通り言及がなされています。

  1. 高齢者等終身サポート事業者が経営する施設、サービスの入所契約や利用契約の締結や費用の支払等の代理権を設定しないこと
  2. 高齢者等終身サポート事業者が経営する施設、サービスの入所契約や利用契約の締結や費用の支払等に関する事項を代理権の範囲に入れる場合には、当該事項については任意後見監督人が代理する旨を契約書に明示しておくこと

これらのことから、士業事務所だけで身元保証事業を完結させることは困難であり、身元保証に関わる別法人、専門事業者として別途後見人を立てるべきであると言えます。

今回のガイドラインにより、全ての事業者の健全化に向けた機運が高まることは間違いありません。我々も国内最大規模の身元保証団体として、より一層分かりやすく、お役に立つサービスの提供と普及に努めてまいります。

くらし全般

身元保証

相続・遺言

介護・高齢者施設

葬儀・供養