死後事務委任契約について

公開日: 2020年07月30日

更新日: 2022年04月22日

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死後事務委任契約とは

人が亡くなった後の財産は遺産相続として手続きが進められますが、他にも葬儀の取り仕切り、役所への行政手続き、公共料金の支払い、病院代等の清算、年金手続き、クレジットカードの解約等、様々な事務手続きが発生します。
これら事務手続きは一般的には親族が行いますが、身寄りがいない方にはこれらの作業をしてくれる人はいません。

近年、高齢化社会が進み、また子供がいない夫婦も多く、この死後事務を行う方がいないまま亡くなる方が増えているのが現実です。
このように、死後に発生する複雑で面倒な事務手続きを生前のうちに誰かへ委任しておくことができる制度のことを「死後事務委任契約」と言います。

死後事務委任契約を結ぶ

死後事務委任契約の受任者には特に資格のようなものはありませんので、任せる内容や任せる人物(通常は信頼のおける親族や知人)、 そのほか行政書士や司法書士などの専門家等、自由に定めて契約することができます。
ただし、委任事務が履行される際には委任者は既に亡くなっており、契約内容通りきちんと履行されたかどうかを見届けることができませんので、信頼のおける受任者を選ぶことが重要となります。
親族に死後事務を委任する場合、通常親族は死後事務委任契約をしなくとも死後事務を行ってくれるものですので、死後事務の内容に関して何かしらの強い要望がある場合には親族間で死後事務委任契約を結ぶと良いでしょう。

また、親族友人知人等、専門家以外の人に委任した場合、死後事務の中には慣れない面倒な手続きもあるので、受任者が専門家に依頼する事もあります。
そのようなケースが懸念される場合は、初めから弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に依頼した方が良いでしょう。
一般的な死後事務であればどの専門家でも依頼は可能です。
いずれにせよ死後事務委任契約は、認知症等により意思能力を欠いた状態では本人の判断で契約を結ぶことはできませんので、委任者に意思能力があって元気なうちに結びましょう。

死後事務委任の契約内容

死後事務委任契約において委任する業務には様々な内容を盛り込む事が可能です。

【死後事務委任契約内容の一例】

  1. 行政官庁等への諸届(死亡届の提出、戸籍関係、社会保険・国民健康保険・国民年金保険等の資格抹消申請等、住民税や固定資産税等の納税関係)
  2. 直葬、火葬、納骨、埋葬、散骨等に関する手続き
  3. 代供養に関する手続き
  4. 住居の管理・明け渡し、生活用品・家財道具等の遺品の整理・処分
  5. 病院の退院手続き、医療費、入院費等の清算手続き
  6. 老人ホーム等の施設利用料等の支払い及び入居一時金等の受領に関する事務
  7. 公共サービス等の名義変更・解約・清算手続きに関する事務
  8. 族等への連絡に関する事務
  9. ホームページ、ブログ、SNS等への死亡の告知・閉鎖、解約や退会処理
  10. 保有するパソコンの内部情報の消去事務
  11. 勤務先の退職手続き
  12. 運転免許証の返納・車両の廃車手続き・移転登録(名銀行)
  13. ペットの引き渡し

委任者が亡くなってから死後事務委任契約が発動するので、発動時に内容変更することはできません。
死後事務委任契約の作成段階で、思いつく限りの委任事項を盛り込み、死後に不都合のないようにします。

死後事務委任契約の預託金について

委任者が死亡すると、遺体の引き取り・葬儀の手配・死亡届など、悲しんでいる暇もないほど早急にやらなければならない事項が発生します。
それと同時に葬儀や火葬・病院代の支払いなど、様々な費用が必要となります。死後事務委任契約の受任者がすべての支払いを立替えるとなると負担は大きく、万が一受任者に手持ちの現金がないとなると葬儀ができないという事態になりかねません。
こういったことを避けるにも、一定額を死後事務委任契約時に委任者から受任者に対して預託しておく方法があります。
葬儀の規模・種類にもよりますが、預託金は100万円~150万円程度が一般的ですが、預託を受けたお金はあくまでも委任者のものですので、受任者は自分の財産とは別に管理をします。

死後事務委任契約書

契約は口頭でも出来ますが、契約書を作成し形として残すことをお勧めします。
死後事務委任契約は、委任者の死後発動されるので契約から発動まで長い期間を要することが少なくありません。
契約書がないと、依頼通りの遂行とはいかない可能性があり、委任者の相続人が委任者の代わりに確認しようにも契約書がなければ委任内容を把握することができません。
弁護士、司法書士、行政書士等の専門家に死後事務を委任する場合は、専門家が契約書を作成します。
専門家以外の人に死後事務を委任する場合は、契約書を公正証書にすることをお勧めします。
公正証書の作成には手数料がかかりますが、公証人が契約書を作成しますので、契約書の作成方法が分からない場合には安心です。公正証書にした場合は、正本が受任者に、謄本が委任者に渡されます。

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